変える勇気、断る勇気
変える勇気、断る勇気
Tag: 労災情報
ある労災事故例を元に討論を行いました。
その事故例を要約すると、
「路肩で移動しながら刈り取った草をトラックに積み込む作業を、移動しながら警備員1名の誘導で行っていた。
作業が緩やかな右カーブ付近に差し掛かった頃、カーブを曲がり切れない車両がノーブレーキで突っ込んできた。
警備員と作業員は重傷、運転者はペットボトルのキャップを開けようとして脇無運転していた。」
というものです。
様々な意見が交わされ、まとめて終了しました。
そこで気になった点が一つ。
対策の中で「資機材増設」「警備員増員」「片側交互通行規制の実施」など出たところ、
「ユーザーはこういった現場では1名の警備員しか用命しない。現実に合わせその中で可能な対策を検討するべきではないか」
というものでした。
確かに、ユーザーはお客様であり警備料金を支払う方です。費用対効果も考慮します。警備員や資機材の増はコストにも係わります。
私も以前は同様に思っていました。
しかし、どうでしょう。
上記の事故例は現実にあった事故を元にしています。当然、事故後は安全対策検討会等により3日~一週間、又はそれ以上工事がストップしたはずです。そして余計にコストが掛ったはず。だから、安全対策費はケチってはいけない。
と、いうところまでは正論ですが、綺麗ごとに聞こえ納得いかない人もいるでしょう。
本題です。
事故例研究の意義は、
「同様の事故を再発させない!」
「事故原因を究明することで、警備員自身にも危機管理意識をもたせる」
「事故例を研究することで、実際に事故に遭遇せずに疑似経験として活用できる」
と、考えます。
確かに、明らかに現実離れした対策は実行不能ですし、現実に照らし合わせた対策は必要不可欠です。
でも、ここでいう「現実に合わせた」という表現が「お客様の要望に合わせた」と直結していることに違和感を感じてしまうのです。
同様の事故を発生させないため、我々はお客様に様々な提案をします。その提案はお客さまにとって受け入れがたいものである場合もあります。
「だから、しょうがないからお客様の要望通りに誘導する」
では、事故を撲滅することはできません。
提案は十分にさせて頂く、理解して頂く、この努力を止めてはならないのです。
「環境が、安全と照らし合わせてふさわしくなければ事故が発生する。」by貝辻講師(14日ブログ参照)
我々が考える安全対策とユーザーの考えがあまりにもかけ離れている場合は、その仕事を断る勇気が必要です。
安全対策の策定は、お客様を守り、第三者を守り、警備員自身を守る重要な業務です。
認識を変えなければなりません。
変わらなければならないのは、我々警備業者の安全意識であり、ユーザーの安全意識です。
そのためには、最善の方法を提案し、了解していただく努力を惜しまずに、時間をかけながら対応する必要が有ります。
お客様は必ず分かってくれます。
事故が起きてからでは、何の反省にもならない。
受傷事故による重傷、死亡災害は決して取り返しのつかない最悪の事態だからです。